帰省のお誘い
2020年11月初旬。
ポストに親戚から手紙が届いていました。
何代にも渡り、その場所で商売をし、守り続けてきた家を離れ、
別の場所に引っ越すことになったからお別れ会をしたいとのお誘い。
私の曽祖父、曾祖母の家、祖母が育った家でもあります。
もちろん私も生まれたそのときから週に何度も遊びに行き、
夏休みともなれば泊まり込んでお祭りや花火を楽しんでいた思い出の家。
昔ながらの造りなので、お祭りで提灯でも出そうものなら
カメラを持った方が外観を撮りに来ます。
常に鍵もオープン。
インターホンなどありません。
ふらっと立ち寄れば親戚や近所の人に会える。
幼稚園の頃には曾祖母やその妹のお茶飲みの仲間に入れてもらい、
『あんたはこれだろ?』と干し芋と干し柿をもらって食べていました。
今思うと健康的で贅沢なおやつだな(笑)
同世代から100歳近いおばあさんまで、様々な年代の人と話せるその家のお陰で
物怖じせずに初対面の人と話せるようになったのかもしれません。
世代が違えば考え方も知識の量も違う。
様々なことをその環境から教えてもらいました。
別の場所に引っ越して普通の一軒家になったら今までのように
不特定多数が上り込んでお茶を飲むなんてことはないでしょう。
思い出の場所に取り壊しの前に家にもう一度上がりたいし、
みんなにも久しぶりに会いたい!
周りにはGO TOキャンペーンで新幹線移動をし、各地の観光を楽しんでいる人もいたので、
マスクと換気を心がければ大丈夫だろうと思い、一度は参加を伝えました。
キャンセルを決断
出発の日にちが近づくにつれて日に日に増える罪悪感。
危険とわかっていて出かけるのはどうなのだろうと毎日考えて夫とも話し合いました。
もし感染して自分だけで苦しんで終わるならまだしも、誰かに移すかもしれないし、
検査から治療まで医療従事者の力を借りなくてはならない。
自分一人の問題では済まないという結論に至りました。
結果的に集まりの3日前にキャンセル。
ドタキャンってやつです。
私、母、叔母の家族。
計5人が行かない選択をしました。
行けないことに涙した当日
2019年9月に結婚し、式や披露宴をすることなく過ごしているうちにコロナが流行。
親戚には写真館で撮った結婚写真をフォトブックにして送ったものの、
入籍してからは1度も会えていない状況です。
集まり当日。
親戚一同から動画が届きました。
動画に映るのは段になった大きなケーキを持った見慣れた顔。
そのケーキには『おともちゃん!おめでとう!!』というプレートが乗っています。
私が帰省すると思って結婚祝いの準備をしてくれていたのです。
動画には全員の笑顔と
『結婚おめでとう!また遊びに来てねー!』という声が入っていました。
もしも自分が無症状の感染者で、新幹線や電車内の人に移したらどうしよう。
もし出かけたことで感染し、病院にお世話になることになったら
結果的に医療従事者の負担を増やすことになる。
そんな自分の判断で参加を断ったにも関わらず、
「行きたかったなぁ…」という言葉が無意識に口から出て涙が出ました。
いつになったらこの状況が収まるのでしょう。
私と同じように、行きたい場所に行けず、会いたい人に会えない方が
日本中、世界中にたくさんいるはず。
もうちょっとの辛抱だと信じて、頑張りましょうね。
今回の親戚の集まりをキャンセルした5人全員が口を揃えて言ったのが、
「赤ちゃんや高齢者もいるから、もし感染拡大したら大変だものね!」でした。
こういう辛い時って、自分だけの為に我慢をすると抑えきれなくなるけれど、
誰かのためにって思うと頑張れたりします。
“自分の体を守ることが病院で働く方の負担を減らすことにもなる!”
これを私と家族のスローガンにしてこの事態を乗り切ろうと思っています。
来年こそはたくさんの人と会える世の中になると信じて…。
皆様も良いお年をお迎えくださいね。